2022.02.07掲載
生まれも育ちも神戸。大学卒業後も地元を離れることなく、アパレルマンとしてファッションの発信地に暮らしていた小泉さん。30歳を過ぎた頃、仕事に忙殺されながらも自分のこれからについて考えるようになった。この仕事を続けていくのか、それとも違う道を探してみるのか。
「どうせなら、これまでとは180度違ったことに挑戦してみたい」これが小泉さんの選択だった。
そんなときに知ったのが、妻・三鈴さんが生まれ育った、三原市大和町が募集していた「地域おこし協力隊」。それまでも帰省で訪れていた自然豊かな大和町。義父が米や野菜を育てている姿に魅力を感じていたこともあり、定住も視野に入れ、協力隊員として農業に携わることを決心した。
もちろん、農業は初体験。神戸の友人からは2年が限界と言われた。でも「やってできないことはない」、そう思った。なにより、小泉さんの周囲にはそう思わせてくれる大和町の人たちがいた。
土を作り耕すところから、実った米や野菜の収穫まで、どれほど助け支えられてきたことか。協力隊員の任期が終了し、どっしり農業に腰を据えた今でも、声を掛け関わってくれる。
農業に関わって、早5年が経とうとしている現在、「こいちゃんファーム」のステッカーが貼られた小泉さんの野菜は、地元のスーパーや、広島県内各地で開催されるマルシェでも販売されている。「健康な体は食べたもので作られている。だから、安心して口にでき、おいしいと実感できるものを作っていきたい。」その思いで育てられた野菜の数々には、関東や関西在住の人からも注文が入る。
新鮮な野菜の販売に加え、加工品の販売も同時に行っている。その代表格が、低温で2時間じっくり焼いた「安納芋の壺焼き芋」と、三鈴さんが勉強を重ねて育てた「ハーブ」の製品。
マルシェでもリピート率が高い人気の品々だ。
安納芋に関しては、無農薬で育てるのはかなりのハードルだと承知の上で育て始めた。でも、農薬・化学肥料・除草剤を使用しない自然に近い環境の中で、予想以上に良い収穫が実現している。甘さとクリーミーさが売りの安納芋は、壺焼き芋以外にも、ジェラートやペーストにも加工予定だ。
さらに、三鈴さんこだわりのハーブからはハーブティーや入浴剤に加え、ハーブを漬け込んだはちみつやハーブソルトも販売予定。マルシェでは、それらの効能についての話も聞くことができる。
夫婦で営む農業。土に向き合い、天候に向き合い、作物に向き合う。自然相手、生き物相手ゆえ奥深く、これという正解もない。でも、「田舎には宝の山がある」、小泉さんはいつもそう感じている。だからこそ探究心も止まることがないのだ。何より経験。失敗することもあるが、それを知識と知恵に変換して次の成長につなげていきたいと考えている。休みもままならないが、今では農業が生活の一部となっているので、苦に感じることはない。
夢は、出身の神戸にもこいちゃんファームを作ること。「農業に興味を持つ人が増えたら、こいちゃんファームのフランチャイズ化もおもしろいんじゃないかと。」そう話す。帽子をかぶったこいちゃんの黄色いステッカーを全国で目にする日がいずれ訪れるかもしれない。
こいちゃんファーム
小泉甲祐・三鈴(こいずみこうすけ・みすず)
広島県三原市大和町
Instagram:https://www.instagram.com/koichan.farm/