2022.06.10掲載
白い外壁に落ち着いた赤色の丸い看板。国道185号線を車で走っていると、思わずその印象的な看板が目に留まる。2021年10月、三原市糸崎にオープンした「よりみち処 さかた」だ。
松浦桂子さんが営むそのお店は、定食を中心とした食事処で、“ごはんとおしゃべり”を楽しめる。
今でこそ、国道やお店周辺の道路もきれいに整備され、その面影は薄れてしまっているが、お店から一本道を入ると、古くからの家並みが続いている糸崎地区。祖父母の家もその中にあった。小さな頃から祖父母と共に過ごすことが多かった松浦さんにとっては、思い出がたくさん詰まった大好きな家だ。
だが、数年前に祖父母が亡くなり、空き家となってしまったその家。そのままにしておくことができず、漠然と「この場所で何かできることはないか?」と思いを巡らせる日々を過ごした。そしてしばしば思い出していたのが、親戚や近所の方が集まっていたにぎやかな風景。まるで〈よりみち〉をするかのように、いつも誰かが訪れ、おしゃべりを楽しんでいた。
「祖父母が遺してくれたこの家を、もう一度、誰でもふらっと〈よりみち〉できる場所にしたいと思ったんです。そして、人が集まるのであれば、食事を提供できたらいいなと。」
それがここでお店を始めるきっかけとなった。気持ちが固まると、動き出すのも早かった。それから1年と少しの準備期間を経てオープンに至った。
店名である「さかた」は、その祖父母の姓。その家で、その街でスタートを切るにあたり、お店の名も敢えて「さかた」に決めた。
コロナ禍の影響で、オープンが延期になったり、休業を余儀なくされることもあったが、今では徐々に常連客も増えてきている。ゴールデンウィークには、店のSNSを見て遠方から足を運んでくれる方もいた。中には、数人で訪れ、食事をしながらおしゃべりを楽しみ、数時間の〈よりみち〉を楽しんでくれるお客様もいる。
「オープンして間もないので、まだまだ手探り状態。お店が軌道に乗るのはもう少し先ですね。」
定食がメインゆえ、お昼の集客が中心だが、これからは夕方から夜にかけても、お客様にふらっと足を運んでもらえる店にしたいと考えている。お年を召した方や、子どもたち、お母さんたちなど、誰に気兼ねすることなく〈よりみち〉してほしいと思っている。
「お店にするために造られたような家ですね。」お客様からよく言われる言葉だ。
大きめのダイニングテーブルが置かれた広い洋室に、掘りごたつのある和室。どちらも祖父母が住んでいた頃からあった部屋だ。オープンに際して作ったのは、カウンター席も設えたキッチンのみ。まるで、そもそもお店になることを想定したかのような造りになっている。祖父母をよく知るご近所さんからは「おじいちゃんもおばあちゃんも、きっと喜んでいるはず。」そう声を掛けられることもある。松浦さんにとっては何より嬉しい言葉だ。
「私自身もおしゃべりが大好きです。ここでおしゃべりして、気持ちが一つ二つ楽になって帰っていただけるようなお店を作っていきたいと心がけています。そんなお店をお客様と一緒に作り上げていけたらいいなと思います。」
祖父母との思い出が詰まったこの家。これからはここへ〈よりみち〉する人にとっての思い出の場所になるだろう。
よりみち処 さかた
松浦桂子(まつうらけいこ)
広島県三原市糸崎3丁目2-27
TEL.0848-67-4107
OPEN:月~土 11:00~21:00
Instagram:https://instagram.com/yorimichi_sakata?igshid=YmMyMTA2M2Y=